11/23(金)。

世間一般では勤労感謝の日、Act9としては目吉センセーの御生誕日(?)。
そして盛岡では


「舞踊詩 黄金の夢」


演目は三部構成。


一.長唄舞踊「勧進帳」
二.筑前琵琶「散る花草紙―奥州下り―」
三.創作舞踊劇「清衡」


炎立つが基になったのは第三部の「清衡」です。


「勧進帳」

素踊り。
登場するのは富樫・義経・弁慶の三人のみで、いずれも紋付袴姿です。
お顔も特に拵えてはいません。
セリフは長唄で聴かせますから、皆さん踊りだけですが、これがまた、もう・・・
何と言ったらいいのやら(*^^*)
佇まい涼やか、時折ハッとするほどの鋭さを垣間見せる富樫。
力強さと逞しさを前面に出しつつ全身全霊で主を守ろうとする弁慶。
義経は、大半を後ろ姿で下手に控えていましたが
気品の高さは隠しようもなく。


勧進帳を読み上げる(フリをする)弁慶。ゆらりと近づく富樫。
すかさず身を避ける弁慶。
一旦は通行を許可しておいて呼び戻す富樫。
戻る義経。庇う弁慶。
義経を疑う富樫。致し方なく義経を打擲する弁慶。
詫びて酒を振舞う富樫。
義経を先に行かせるため、舞う弁慶。

知りつつも見送る富樫。
視線だけで富樫に感謝の意を示し、引っ込む弁慶。


歌舞伎の時の、見得や飛び六法はありませんが
その代わり、心ゆくまで踊りと所作の美しさを堪能することができて嬉しかった。
他のお客様もそうだったようで

幕が下りた瞬間、客席では壮大なざわめきがおきました。


「散る花草紙―奥州下り―」

演者は上原まりさん。
寡聞にしてお名前しか存じ上げなかったのですが、
元タカラジェンヌなのだそうな・・・

どおりでとてもお綺麗な方。

信夫の里で佐藤継信・忠信兄弟の母に会った義経が、
自分の身代わりとなって壇ノ浦に散った継信の最期を伝える−というお話。
物悲しげな琵琶の音と語り口とが相まって胸に突き刺さります。
わずか20分ほどでしたのに、知らず集中していたせいか、終わった時は
ホーッと大きな息をついていました。


「清衡」

まさか
清衡の獅子毛姿を見ることになるとは思いませんでした(⌒-⌒; )

ここは高館なのでしょうか・・・
泰衡軍に囲まれ、最早これまでと言う義経。
演じるは中村壱太郎(かずたろう)クン。
「勧進帳」の時も彼でしたが、今は勿論キチンとお顔しています。
雛飾りのお内裏様のようにおっとりとしていて、
正に御曹子と呼びたくなる形の良さ。
片や「お落ちあそばせ」と、あくまでも主を逃がそうとする弁慶。
こちらも「勧進帳」と同じく。若柳吉蔵さん。
そのふたりの前に現れる、清衡の亡霊。

も一回言いますが、獅子毛姿です。
それがヌォーッとせり上がっていらしたわけなのですよ、
獅子毛姿で。


しょうじきなとこ、
ちょっと考えました、いろいろと(謎)。はい。


既にご承知のことと思いますが、愛之助さんです。
今回盛岡で彼の舞台を観るといったら、各方面から異様に羨ましがられましたが
実際拝見して納得しました。
確かにこれは人気ない方がおかしい。
でも、


獅子毛姿<くどい>


とは言ってもおどろおどろしい印象はなく、
あちら側の世界にいて何もかも見通している・・・
そんな透明感のある清衡です。


驚く義経主従の前でサラリとひとくさり、
戦の模様を語りつつ舞って清衡はフイと消えます。
夢から覚めたように我に返るふたり。
そして暗転、場面が変わって
ここは・・・どこだろう?
てか、この方どなた?(・・?


沙羅でした(^-^;


大河ドラマでは多岐川裕美がすんごいヘアスタイルになってましたけど
こちらは全体的にすんごいことなってました。
そりゃあね、男性ですからね。
かなりの押し出しっぷりでございます。
お衣装や髪形も平安貴族風で、アラハバキを祀る物部の巫女さんにはお世辞にも・・・
と一瞬思いましたが、そんな瑣末なことはいいからっ!てくらいの存在感で
祝詞あげているところ、特に経清や貞任の行く末を知ってしまった時の表情は
話のすじ分かっているのにギョッとするほどの痛々しさ。

すごい方だなぁ。


戦が終わり、結有が清原に再嫁した折は、沙羅もついてったという設定らしく
館の部屋で、なぜあの時死なせてくれなかったと恨み言をぶつける結有に、
安倍のため耐えるように切々と諭していました。
原作では確かこれって乙那が説得したというようになってましたね。
沙羅は武貞の子を産めとも言います。

実の母にこんなセリフ言わすとは。
なかなか強烈ですわ。


乙那といえば。
出ていない・・・わけではなかったのですが。
とりあえず、姿は現さない。
語り部、になるのですかね、声だけです、
しかもどうしてか


女になっていました。


ま、いーか。


結有役は義経と二役で、壱太郎クン。
これがまた



カワイイ(*´∀`*)



実にカワイイ



沙羅の前で泣いていた時は、まだ初々しさが多分に残っていて
しかもそれが、さぞや経清に大事に大事にされていたんだろうなぁと
(勝手に)察してしまうほどの愛らしさも伴っていて。
原作の結有は、少なくとも表面上はそういう素振りなかったですから
こんな愛されキャラの結有って貴重だと思いました。
もうねぇ・・・カワイイのですよ。
武貞に、本当は今も経清が恋しいのだろうと疑われ、
内心を隠してそんなことはないと甘えてみせながらも背けた顔はどこか遠い目で・・・
カ・・・


カワイイ・・・


いっそ嫁にほしいくらい。

なのに


時が流れ、元服した清衡と対峙する場面では
先ほどとは打って変わって母の貫禄たっぷり。

それと知らされず義家と再会した時、亡き夫の髷を受け取ろうとして
おずおずと手を伸ばすところでは刹那新妻の頃の目に戻っても
でも義家に誤解を詫びる時にはもう「母」なのです。

確か現役の大学生と聞いてますが・・・
何なんだこのコ。


転換の時間にプログラム覗いてみます。
・・・


平成2年生まれ。


へいせい?


今年は24年だから
2を引くと
引くと


にじゅうにさい。


それであれかい<コレコレ>



人間国宝を祖父に持つ、成駒屋直系のサラブレッド。
その程度の知識しか彼に関しては持っていず
FM放送で邦楽番組レギュラー持ってますけど、聴いた限りでは
どこか覚束ないというか、幼いなぁというイメージです。
それが舞台では。
これですか。


そりゃ梨園の御曹子だもの。
という答えで間違ってはいない、でしょうが
それだけで全部説明しきれるともとても思えないのです。


いやぁ・・・


何はともあれ



カワイイ(〃▽〃)



いかんこんなとこで立ち止まってるわけにはいかない。
先に進まねば。



義家役は尾上菊之丞さん。
「勧進帳」では富樫をおやりになられました。
清しさが際立っていた富樫の時とは違い、凛々しい武将姿。
まるで実の父みたく清衡を見る眼差しで、ああ懐の深い人なんだなぁと
感じました。



で、いよいよ戦の場面。
やはりここは、歌舞伎だし。
あの独特の立ち回りで表現するのかと思っていたら


ホントにそうでした。


時間が限られているわけですから、どこをどう省略してどこをクローズアップするか
そういう部分も結構興味あったのですけど

はぁ〜こんなにバッサリと。

というのが最初の感想です。
勿論、良い方の感想。



舞台上では真衡と清衡たちが刃を交えています。
史実では三兄弟が直にチャンチャンバラバラする場面はさすがになかったでせうが
真衡vs清衡・家衡という図式は間違いないわけですから
こういった形で見せるとはとてもわかりやすい。
そういえば結有と義家の対面も、
清衡に案内されていきなり結有の部屋訪ねてましたっけ。
いくら内心を隠して暮らしてると言っても、無防備が過ぎやしないかい?
ってツッコミ入れるのは、多分野暮なのですね。
伝えたいのはそこではない。


結有も義家も清衡も、みんな経清を忘れずにいたということ。


こんなふうに切り取って見せるんだぁ・・・
と、目からウロコの思いでした。



そしてクライマックスの足音は聞こえてきます。



真衡を討ち取り、ホッとした面持ちで家衡の肩に手を置く清衡・・・
それを邪険に振りはらう弟。


えっ?と戸惑う兄。
見向きもしない弟。



ああ・・・ついにここまできちゃったんだ。



手間かけさすよなぁ・・・と言わんばかりに義家が登場します。
これには家衡も太刀打ちできない。



全てに片がついた時、義家と互いの目を見やって微笑んだ清衡でしたが
果たして心からの笑みであったのか。



金色堂の前、失われた数多の命に話しかける彼は
大層美しい束帯姿ではありました、けれども
どこか何かが空っぽのような、言いようのないさみしげな顔をしていました。



にしても・・・と思います。
尾上菊之丞さんは尾上流家元、若柳吉蔵さんは若柳流宗家。
沙羅を演じられた若柳吉金吾さんも若柳流の重鎮だそうです。
武貞・真衡(二役)と家衡をおやりになったのはそれぞれ花柳流の方。
皆さん本分は舞踊家ですが、演技力凄すぎ・・・
パンフで前知識入れてなかったら多分最後まで分からなかったでしょう、きっと。
歌舞伎のおふたりと絡んでいても、ぎこちなさなど微塵もないのには舌を巻きました。



いやそれにしても・・・
壱太郎クン・・・



めんこかった(^^♪



11/23(金)。
世間一般では勤労感謝の日、Act9としては目吉センセーの御生誕日(?)。
そして盛岡では



「炎立つ」が歌舞伎になりました。


建速素戔嗚拝