東和行
11/24(日)。快晴。
その分寒い朝となりました。
行きたい行きたいと言い続けること約2ヶ月(笑)、それでも天候が悪かったり用事が入ったりとなかなか決行できずに
いたのですが、ようやく東和町に行けそうです。
あたりは一面銀白の霜がおりていますが、幸い道路の状態は良好。
焦ることなくのんびりとした出発です。
スサノオの地元から東和町までは、秋田自動車道を利用するというのがおそらく最短の方法です。
ですが。
東和町の他にも実は見たいところがありました。
湯田町の錦秋湖です。
紅葉の季節は過ぎましたが、初冬の景色も悪くはなかろうと下を走っていくことに。
秋田市から国道13号線を走り横手まで。そこから107号線を北上方面に向かうという道のりです。
「星封陣」中にもその地名がチラホラと出てきた横手市。
小正月行事「かまくら」が開催されるところと言えば、なるほどと得心してくださる方もいらっしゃると思います。
つけ加えるとすると、市の北側金沢(かねざわ)は後三年の役の舞台となった場所。
八幡太郎義家所縁の地でもあり、城址公園として市民の憩いの場になっています。
そういえば、すぐそばを流れる川は確か「厨川」だったような...
秋田県の山内村と県境を接する湯田町は、温泉で知られた町。
JR北上線「ほっとゆだ駅」は駅舎に温泉が併設されており、観光客の人気を集めています。
近年は高速道路も開通し、秋田からも気軽に出かけられる距離になりましたが、スサノオが自身で運転しての
来訪は今日が初めてです。
ここから錦秋湖へ向かう手前を左へ折れてまっすぐ進むと沢内村に至るのですが、それはまたの機会に...
途中で水分補給しつつ、2時間と少しで「道の駅錦秋湖」に到着。
予想どおり、冬の始まりの薄く淡い色合いの景色を堪能することができました。
少し遅めの朝食を摂り、携帯メールのチェックなどをしていたのですが、ふと、あることに気づきました。
「錦秋湖だけが見たかったのなら『湯田』まで高速のってきてもよかったかなぁ...」
もう遅いのですが(自爆)
でも自分で運転してここまで来たのは初めてだし、来る途中でも少し気になるお店を発見したりと、
楽しいことも多々あったので、ここは良しとすることに。
高速だと、横手を過ぎてからトンネルが続いてしんどいしぃ〜というのは内緒。
「道の駅錦秋湖」は町境近くにあるため、ここを出発するとほどなく北上市に入ります。
スノーシェッドと呼ばれる、防雪のためのトンネルをいくつかくぐり、しばらく走ると市街地へ。
ゆったりとした町並みを楽しみながら、有田町の十字路を目指します。
そこを左折して花巻経由で東和町に入る予定...が。
すぐそばにさしかかったところの標識には「東和・田瀬湖方面 ↑」
つまり、直進だよん♪との標示が。
なるほど、つまりは二等辺三角形の長辺を走るというわけだ。
このルートでいくと、おそらく丹内山神社へ先に着くことになりそうです(多分)。
う〜ん...
理屈としては分かるのですが、今イチ自信がありません。
考えていたとおり、花巻から入ることにしました。
花巻といえばイーハトーブ、宮沢賢治ゆかりの町です。
スサノオ自身は賢治には詳しくないのですが、それなりの風景が見られるのかな、と少し期待。
が。
期待するも、市に入った途端にもう右折(笑)。
「滞在時間」は僅かなものでした。
東和町は、花巻・北上・遠野の三市に囲まれた大変静かな町です。
地図は持参していきませんでしたが、毘沙門天や東和温泉へなど、行く先々に案内板が設置されているので
余程の見落としでもない限り迷う心配は皆無...
すいません、見落としました(笑)
直前まで順調だったので、安心しすぎたのでしょうか。
進行方向の左手に確かに「三熊野神社 毘沙門堂」とあったのですが、たまたまその辺りの道路が工事中で
デコボコしていたためそちらに一瞬気をとられ、
「あっ」
と思った時には通過してしまっていました(爆)
すぐに気づいたので程なくUターンできましたが、もしもホントに見過ごしていたらそのまま丹内山神社に
行ってしまうところでした。
それはそれで構わないのですが。
車道はかなりの狭さ。
対向が来たらどうすりゃいいんだいと思うような幅で、おまけにかなりの傾斜です。
よくのぼったねぇ、剣。というより、そもそもここまでよく歩いてきたね。
伊達に高野山にはいなかったのだな、やはり。
カーブを曲がるごとにチラチラと見える本来の参道もかなりの急勾配ですが、距離を考えるともしかして
そちらの方が近いんでは...
なんてことを思い巡らしているうちに、無事駐車場に到着。
車が何台か止まっていましたが、当然ながら全て「岩手」ナンバーでした。
何はともあれ、まずは神社へお参りを。鳥居をくぐって左手へ。
坂上田村麻呂が勧請したと伝えられるそうですが、とても立派な社殿です。
そして、そのとなりには大きな土俵が。
ここは「泣き相撲」でも有名な神社で、毎年数え年2歳の男の子によって行われるとか。
土俵の真ん中には、諸々の神が祀られていました。
毘沙門堂は、そこからほんの少しだけ右手に進んだところにあります。
行ってみるまで知らなかったのですが、件の毘沙門様は現在このお堂の中には安置されていないのでした。
何でもここから少し上にある収蔵庫で拝観できるとのこと。
う〜ん...
毘沙門様が睨みつける丹内山神社の方向を写真に収めたかったのですが、残念。
多分あっちだろうなぁという程度には検討もつくのですが、木々の枝も生い茂っているので、こりゃ撮っても
分かりづらいかもしれない。
そんなわけで、ここでの撮影は外観と案内板のみにとどめ、とりあえずは中へ。
どうやら一旦中へ入り、そこから渡り廊下を通って収蔵庫へ行くようです。
お堂の中には「大悲多聞天」と書かれた扁額が多数掲げられていました。
「毘沙門尊天」と書かれたものもチラリ。
どれほどの信仰を集めていたかが偲ばれます。
渡り廊下を過ぎて、少し急な石段を上ると、やがて白い収蔵庫が見えてきます。
すぐ脇に受付らしきところが見えたので、ここで拝観料を払うのだろうと近づいたのですが...
誰もいない(笑)。
中を覗いてみても...誰もいない。
振り返って収蔵庫の入り口あたりを見上げてみたのですが、誰もいない。
おい、これぢゃスルーで入られても文句は言えないぞ(爆)と思いながらも少し待ってみたのですが、
誰も登場しないので(笑)とにかく入り口へ向かいました。
土足厳禁らしひので履いていたスニーカーを脱ぎつつ、誰かいないかなぁ〜と、ふと顔をあげると。
帽子をかぶった、一見作業員風のおっちゃんと視線がパチリ。
そして何故か、ふたり同時に「あ」。
このおっちゃんが受付の人でした。
何はともあれ、これで無断拝観(というのか?)をしなくて済む♪と、お金を払って
ようやくお堂の中へ。
最初に目に飛び込んできた時の感想は、ひと言。
「でっけぇ〜〜〜」
もちろんスサノオの他にも見に来ていた人が何人かいらしたのですが、そんなことも忘れて
かなり大きなひとり言をつぶやいてしまうほどでした。
傍らのカセットデッキからエンドレスで流れている説明によると、像の高さは光背も含めてなんと4.73m。
一木造の毘沙門天像としては日本最大とのことで、材質はヒノキだそうです。
毘沙門天というと邪鬼を踏みつけているのが一般的ですが、ここのは兜跋毘沙門天ですので
地天女と呼ばれる女性が掲げる両の掌に足をのせています。
この地天女は服従した蝦夷を象徴しているのだそうで、毘沙門天はつまりは坂上田村麻呂。
彼がこの地を平定したことを表しているのですね。
何とも複雑な思いがしました。
で、いつもなら踏みつけられているはずの邪鬼は何処にいるのかというと。
毘沙門天の両脇に控えています。
向かって右側が「羅婆(らば)」、左側が「毘羅婆(びらば)」。
仏道に帰依し、今は毘沙門天に仕えているという説明なのですが、それにしては彼等(彼女等?)の印相が
少し気になりました。
羅婆・毘羅婆共に両の手は刀剣印を結び、胸の前でクロスさせています。
仏法守護の意味なのか、それとも別の暗示があるのか。
不思議な思いで拝見したのですが、残念ながら顔の表情からその意味を窺い知ることはできませんでした。
剣が来た時は紅葉が真っ盛りだった毘沙門堂ですが、今はすっかり冬支度の風情。
それでも駐車場からは町の美しい風景を眺めることができました。
さ、お次は丹内山神社に参りますか。
丹内山神社は毘沙門堂のある集落から東、田瀬湖へと向かう方向にあります。
長閑な風景の中を走っていくのですが、あちらこちらに鳥居が目につくのは気のせいでしょうか。
例によって案内板に従いつつ車を走らせていくと、やがて突き当たりのT字路が。
そこを右折するとほどなくレトロな建物が見えてきました。
お、いいねぇ♪と思いつつ通過しよう...とすると、左手にいきなり鳥居が。
丹内山神社「二の鳥居」でした。
車道を挟んで真向かいに駐車場...
だよねぇ?
すぐ隣りはごく普通の民家。反対側は食料品店。
かかっている日本酒の看板はスサノオの地元の銘酒(爆)。
ま、んなことはいいとして。
ホントにここか?駐車しといていいのか?と思うほど、普通の場所でした。
でも付近の名所旧跡案内図も立っているし、隣りの家からこちらを伺っている(笑)おやぢさんも
何も言ってこないし、まぁいいだろう。
と勝手に決めました。
「藤原清衡公篤信の地」とある大きな立札の脇を通って鳥居をくぐります。
どうやら先ほどの車道を黙って上がっていくと三の鳥居にたどり着くようなのですが、「降魔王」が頭の隅に
あったのかどうか、何故かてくてくと登るスサノオ。
キツいといえば結構キツいのですが、かと言ってものすごくキツいのかと聞かれればそうでもないような気もする(謎爆)
何とも形容のしづらい坂道です。
坂はそこそこ急なのになぁ〜などと思いながら歩みを進めると、もうそこには三の鳥居前の駐車場が見えてきました。
この日の東和町は快晴でしたが、丹内山神社はさすが森然とした風情を漂わせ、そこだけが異世界のようにも思えます。
柄にもなくドキドキしてしまったのは、きっとそのせいなのでしょう。
境内には枯葉を集めて焚き火をした後があちこちに残っていますが、不思議なことに人影はありません。
...火を焚いてたってことは、誰かいるはず。
...でも現実には誰もいない。
...何故?
.....
深くは考えないようにしよう(「あいつ」に会いそうで怖かったというのは内緒)
この季節、空気はピンと張り詰めたような緊張感に満ちています。
拝殿へと続く道の右手には、八幡神社と賀茂神社を合祀してあるお社が。
源義家(八幡太郎)・義綱(賀茂次郎)兄弟に因んでのことだそうですが、このふたりって確かあまり仲は...
よろしくなかったんじゃなかったっけ?
「炎立つ」でも登場していた弟は義光だけだったような記憶がありますが。
ひときわ赤い鳥居をぬけると、すぐ目の前が拝殿です。
それなりに想像はしていましたが、この存在感は言葉が見つかりません。
ある種の畏れを抱きつつも、それでもやっぱりしげしげと眺めていたのですが、ふと正面扉の上部に
黒い何かが一対、掛かっているのが目につきました。
「?」
一見狛犬のように見えるのですが、それにしては随分とご立派な牙です。
それより何より、長い角が2本生えています。
「???」
これってやっぱり...○○なのかなぁ?
形容しがたい独特の雰囲気に、シャッターを切ることがなかなかできませんでした。
(結局、後で撮影しましたが)
それはそうと、あの石も見なければ。
丹内山神社では「胎内石」と呼んでいるようです。
拝殿のすぐ裏手にあるというので、右手に少し移動した途端。
「..........」
ワンパターンですいません、でもやっぱり言ってしまいました。
「でっけえ〜〜〜」
だってホントに大きかったんだもの。
そっかぁ、ここで剣は「あいつ」と出会ったのか。
なかなか立ちづらいスペースだが(爆)。
感受性に問題があるのかどうか、若しくはそもそも感受性があるのか、スサノオ自身は一滴の涙すらも
出ませんでしたが(笑)迫ってくるものがヒシヒシと感じられました。
こればかりはいくら何でも写真に収めることはできません。
霊感とは全く無縁な体質ですが、これだけは...
できるできないではなく、してはいけないという心持ちになったというのが正直なところです。
拝殿の前に戻り、先程は撮れなかった狛犬(?)を撮影しました。
時間の関係で、フォルクローレや温泉は行けませんでしたが、毘沙門堂と丹内山神社を見ることが
できただけでもとても有意義な時間でした。
訪問を計画されている方は、是非是非足をお運びくださいませ。
建速素戔嗚拝